忙しさに泣いた 2021/03/23
勘弁してほしい。
と口から漏らさぬ代わりに画面に見えない手足をぶらぶらさせて気分を紛らわせていた。朝っぱらから先輩が絞られている。しかも私もちょっと関わる案件だが、絞られているはずの先輩まで白熱し始めたのでここで口を出すと火に油だ。
後で直接先輩に連絡しようと考えつつ、その旨を議論中の先輩にスラックしたらすぐに返信がきた。
そうして今日が始まったわけだが、相変わらず重量級の対応が雹のように降ってくる。ちょっとかじって次、とはいけないもので、これは定時が終わったらやる、など順序をつけて急ぎでない案件は捨てていく。
それでも今日の夕方にミーティングが入っている記事の原稿はそれなりに上手くまとまっていると思っていた。
「最近忙しいと思うけど、分散できるタスクないの?」
今朝先輩とバトルを繰り広げていた上司はまずそう言った。私を心配する体だが、鯔のつまり「忙しさにかまけて記事の質が落ちている」と言いたいらしい。
「それくらいだったら他の人にタスク渡して、まとまった時間とって記事書いた方がいいよ。書くからにはちゃんとした質のものを出してほしいし」
それは私も全くもって同意している。しかし今までの経緯を振り返って、むしろ異動した先輩から渡されたタスクにてんてこまいになって半月が過ぎていた私はどう気持ちを処理すれば良いのか。
日々の残業で朦朧とした頭ではそうした反論も思いつかなかった。
それでも、私は定時過ぎにまとまった時間をとった。まとまった時間を取って、何を言っているのか理解できない上司の言っていることを考えて、自分なりにかける形にアウトプットしなおした。理解するためにノートに手書きで何度も図式した。
下手したら今までよりも時間を使っていたと思う。それでもダメだったらしかった。
多分いけないのは、私の思いとして記事が書かれていないからだろう。私の言葉だけでは薄まってしまうが、上司にこういう思いとして書けと言われて書いていると思考が停止する。どうにも向かない。
それくらいなら事実をかき並べていたい。インタビューして、その内容をまとめたい。自分なんていらない。もとから自分を出しているようで出せない場所だ。勝手にそれはこの記事のあなたらしくないと決めつけられる。私は私でいたいのに。私が自分で立ち位置を作っていきたいのに。これが私なのに。
名前を冠した連載にしたのがいけなかった。もっと無難な名前にしておけば、SEO対策にも効いたし他の人でもかけたし個人を出さなくて済んだ。
インタビューがしたい。インタビュー記事が書きたい。価値があるのは私の意見ではない。私の考察ではない。