祖母誕生日に大きな花束 2020/07/12
正確には花束ではないか。
フラワーアレンジメントだ。
母のおすすめだという隣駅の花屋で、初めてフラワーアレンジメントの予約をした。
「89歳のおばあちゃんの誕生日プレゼントです。花あんま分からないんですけど、明るくて可愛い目で」
と店主らしき感じのいいおじさんに昨日伝えて、今日の14時に取りに行った。
予算は三千円で、手ごろな花束くらいかと思っていたが、人の頭2つ分くらいのピンクをベースに作られた巨大なアレンジメントが手渡されて呆気にとられた。
なんだこれは。でかすぎるだろ。
そもそも「フラワーアレンジメント」とは、いろんな花で作った花束だと思っていたが違った。
鉢植えのようなものにどっかりと大量の花が刺さっていて、そのまま置いて飾れるらしい。
子供の頃、家族4人で食べた誕生日ケーキが入っていたサイズの大きな袋に入れてもらって、私は店を出た。
車で久しぶりに祖母の家へ向かったが、相変わらず元気だった。
今日は教会に行ったらしい。
自分で教会まで歩いているのかと思ったが、後で母に確認したら「教会の人が迎えに来てくれるのよ」とのことだった。
痴呆は確実に進んでいるが、生前の祖父と比べれば天地の差だ。
幼稚化し、どんなに辛いときもそばで支えてくれた祖母を忘れ、息子たちに暴言を吐き、喧嘩になる。
祖父がアルツハイマー病に罹ったころは、ずいぶんと壮絶な日々を送っていた気がする。
自分も年だというのに、祖母はどんどんとボケていく祖父に毅然とした態度で支え続けた。
子供や孫にはいつも優しく、しかしはっきり伝えるところははっきりとものをいった。
物腰が柔らかく、笑顔が素敵で女性らしさを詰め込んだ結晶体みたいな人だ。
自分の家系では一番尊敬している人かもしれない。
今年に入ってから会うのは2回目か3回目か、毎回「一人暮らしやめたのね!どうだった?」と話題を振られる。
それでも今年のイベントを覚えていてくれるんだから全然いいだろう。
しっかり自分でご飯も食べているようだし、家もきれいだ。
娘息子や孫たちからもらったお土産ものをきれいにリビングに並べていて、いつ見てもかわいらしい。
はかなげに見えて驚くほど芯が強い。
来年で90歳だが、90歳にはもっと素敵なお祝いをさせてほしい。
長生きしてね。